2022年06月01日
イガオナモミ
イガオナモミ (毬葈耳、毬巻耳、毬雄奈毛美) Xanthium strumarium ssp. italicum
キク科オナモミ属

(石狩市石狩港2021.9.)
子供の頃、空き地に生えている「ひっつき虫」を投げて遊んだ思い出はありませんか?
名前は知らずとも「ひっつき虫」を知っている方はたくさんいるのではないでしょうか。
「ひっつき虫」=「オナモミ」は古い時代に農耕文化渡来と共に大陸からやってきた自然帰化植物と考えられています。戦後に「オオオナモミ」が帰化し、昭和の終わりごろには全国に広がりました。イガオナモミは昭和33年に東京都江東区で初めて採取され、今まさに分布域を急拡大中です。(もうひとつ、トゲオナモミというのありますが、今は西日本をテリトリーとしているようです)
オナモミの仲間はもちろん、遊ぶために生えているのではありません。花後に熟すと水分がなくなって茶色くなり、刺も固くなって、茎から剥がれて動物の毛などにくっついて遠くに運ばれます。とげとげの果実の中には2つの種があり、大きい方が何かの理由で発芽できなかった時のために、小さめの予備の種が入っています。とげとげは動物に運んでもらう役割と、中の種子を食べられないように守る役割があるようです。
まるで魚のハリセンボンのようなとげだらけの実ですが、イガオナモミはオナモミの仲間の中では迫力ナンバーワンです。たくさんあるトゲに、さらに細かいトゲが分枝して生えていて、かなり大きく丸みが感じられます。これは他のオナモミ類には見られません。
こんなものが服についたら厄介なこと!この上ありません。取り外しても細かい刺がたくさん残ったり、服の糸が引きつったり。無キズでは済まないでしょう。
スイスのあるエンジニアが犬と散歩中、服や犬にこの実がたくさんついたことをヒントに、「マジックテープ」を発明したのは有名な話です。ウィキペディアによると、「マジックテープ」は和製英語の商品名です。欧米では「ベルクロー」といい、ベルベット(ビロード)とクローシェ(鈎針)の合成語で、これも商品名です。一般的な名称は「面ファスナー」だそうです。
オナモミは断面の構造や毛の違いなども研究されているそうなので、また新しい商品アイディアが生まれてくるかもしれません。
ちなみにオナモミの仲間はキク科の植物としては珍しい風媒花です。そのせいかは分かりませんが、遺伝的にも形態的にも変異が連続的で区別しにくく、類似種(オオオナモミ、トゲオナモミ、イガオナモミなど)をアメリカ原産のXanthium strumariumとしてまとめ、アジアやヨーロッパでは帰化として扱うことが一般的になりつつあります。
また、オナモミ類が河川敷や牧草地へ侵入した場合、河原に固有な在来種や牧草への競合や駆逐の可能性が心配されます。家畜にとって有毒でもあるため、羊毛の品質低下につながることも指摘・懸念されています。
各地の海岸や河原で大群落を形成しています。古顔のオオオナモミ、新手のイガオナモミ。自然度の高い海や川でも静かに侵攻中です。
葉の様子。

(石狩市石狩港2021.8.)
葉の表面。

(石狩市石狩港2021.8.)
葉の裏。

(石狩市石狩港2021.8.)
葉腋から出ている花序。

(石狩市石狩港2021.8.)
上部は雄頭花、下に雌頭花がつきます。

(石狩市石狩港2021.8.)
雄頭花の下に、果実が育ってきます。


(石狩市石狩港2021.9.)
イガオナモミの果実

刺の先は鈎状になっています。また多数の毛が密生しています。

左がオオオナモミ、右がイガオナモミ

ひっつき虫の中には、大小2つの種が入っています。

<特徴>
・ 南北アメリカ、南ヨーロッパ、ハワイなどに分布しているが、原産地は不明。
・ 1年草
・ キク科では珍しい風媒花
・ 花期7~10月
・ 高さ0.4~1.2m
・ 雌雄同株、雌雄異花の両性花。葉腋から出る花序の上部に雄頭花を数個、下部に雌頭花を多めに付ける。雄頭花は黄色い筒状花が多数集まって球形になり、雄蕊の花糸は合生し、葯は離生。雌頭花は総苞片が合着して壺形になっていて、中に2個の雌花がある。花柱は糸状で総苞の外に突き出て風ばいにより受粉する。
・ 葉は互生。葉身と同長程度の葉柄がある(4~11㎝)。葉身は幅の広い広卵形で3浅裂して縁に不ぞろいの鈍くて浅い鋸歯があり、基部は浅い心形、先は三角形状にとがる。葉面はざらつき、3本の主脈がある。長さ6~9㎝×幅6~12㎝。
・ 茎はよく分枝し、淡い緑色で紫黒色の斑点があり、下向きの短い刺があって著しくざらつく。
・ 果苞(イガのこと。壺状体)は楕円形。頂部に2個の嘴状の突起があり、全長2~3㎝、幅1.2~2.2㎝。表面には鈎のある刺が密にあり、それぞれの棘に小さな毛が密生することが特徴。鱗片毛や腺毛が多い。刺の長さは約5㎜。頂部の刺は4~7㎜、刺の先は鈎状に曲がる。中で大小2個の痩果になる。
キク科オナモミ属
(石狩市石狩港2021.9.)
子供の頃、空き地に生えている「ひっつき虫」を投げて遊んだ思い出はありませんか?
名前は知らずとも「ひっつき虫」を知っている方はたくさんいるのではないでしょうか。
「ひっつき虫」=「オナモミ」は古い時代に農耕文化渡来と共に大陸からやってきた自然帰化植物と考えられています。戦後に「オオオナモミ」が帰化し、昭和の終わりごろには全国に広がりました。イガオナモミは昭和33年に東京都江東区で初めて採取され、今まさに分布域を急拡大中です。(もうひとつ、トゲオナモミというのありますが、今は西日本をテリトリーとしているようです)
オナモミの仲間はもちろん、遊ぶために生えているのではありません。花後に熟すと水分がなくなって茶色くなり、刺も固くなって、茎から剥がれて動物の毛などにくっついて遠くに運ばれます。とげとげの果実の中には2つの種があり、大きい方が何かの理由で発芽できなかった時のために、小さめの予備の種が入っています。とげとげは動物に運んでもらう役割と、中の種子を食べられないように守る役割があるようです。
まるで魚のハリセンボンのようなとげだらけの実ですが、イガオナモミはオナモミの仲間の中では迫力ナンバーワンです。たくさんあるトゲに、さらに細かいトゲが分枝して生えていて、かなり大きく丸みが感じられます。これは他のオナモミ類には見られません。
こんなものが服についたら厄介なこと!この上ありません。取り外しても細かい刺がたくさん残ったり、服の糸が引きつったり。無キズでは済まないでしょう。
スイスのあるエンジニアが犬と散歩中、服や犬にこの実がたくさんついたことをヒントに、「マジックテープ」を発明したのは有名な話です。ウィキペディアによると、「マジックテープ」は和製英語の商品名です。欧米では「ベルクロー」といい、ベルベット(ビロード)とクローシェ(鈎針)の合成語で、これも商品名です。一般的な名称は「面ファスナー」だそうです。
オナモミは断面の構造や毛の違いなども研究されているそうなので、また新しい商品アイディアが生まれてくるかもしれません。
ちなみにオナモミの仲間はキク科の植物としては珍しい風媒花です。そのせいかは分かりませんが、遺伝的にも形態的にも変異が連続的で区別しにくく、類似種(オオオナモミ、トゲオナモミ、イガオナモミなど)をアメリカ原産のXanthium strumariumとしてまとめ、アジアやヨーロッパでは帰化として扱うことが一般的になりつつあります。
また、オナモミ類が河川敷や牧草地へ侵入した場合、河原に固有な在来種や牧草への競合や駆逐の可能性が心配されます。家畜にとって有毒でもあるため、羊毛の品質低下につながることも指摘・懸念されています。
各地の海岸や河原で大群落を形成しています。古顔のオオオナモミ、新手のイガオナモミ。自然度の高い海や川でも静かに侵攻中です。
葉の様子。
(石狩市石狩港2021.8.)
葉の表面。
(石狩市石狩港2021.8.)
葉の裏。
(石狩市石狩港2021.8.)
葉腋から出ている花序。
(石狩市石狩港2021.8.)
上部は雄頭花、下に雌頭花がつきます。
(石狩市石狩港2021.8.)
雄頭花の下に、果実が育ってきます。
(石狩市石狩港2021.9.)
イガオナモミの果実
刺の先は鈎状になっています。また多数の毛が密生しています。
左がオオオナモミ、右がイガオナモミ
ひっつき虫の中には、大小2つの種が入っています。
<特徴>
・ 南北アメリカ、南ヨーロッパ、ハワイなどに分布しているが、原産地は不明。
・ 1年草
・ キク科では珍しい風媒花
・ 花期7~10月
・ 高さ0.4~1.2m
・ 雌雄同株、雌雄異花の両性花。葉腋から出る花序の上部に雄頭花を数個、下部に雌頭花を多めに付ける。雄頭花は黄色い筒状花が多数集まって球形になり、雄蕊の花糸は合生し、葯は離生。雌頭花は総苞片が合着して壺形になっていて、中に2個の雌花がある。花柱は糸状で総苞の外に突き出て風ばいにより受粉する。
・ 葉は互生。葉身と同長程度の葉柄がある(4~11㎝)。葉身は幅の広い広卵形で3浅裂して縁に不ぞろいの鈍くて浅い鋸歯があり、基部は浅い心形、先は三角形状にとがる。葉面はざらつき、3本の主脈がある。長さ6~9㎝×幅6~12㎝。
・ 茎はよく分枝し、淡い緑色で紫黒色の斑点があり、下向きの短い刺があって著しくざらつく。
・ 果苞(イガのこと。壺状体)は楕円形。頂部に2個の嘴状の突起があり、全長2~3㎝、幅1.2~2.2㎝。表面には鈎のある刺が密にあり、それぞれの棘に小さな毛が密生することが特徴。鱗片毛や腺毛が多い。刺の長さは約5㎜。頂部の刺は4~7㎜、刺の先は鈎状に曲がる。中で大小2個の痩果になる。