2024年11月13日
キクイモ
キクイモ(菊芋)Helianthus tuberosus L.
キク科ヒマワリ属

(北海道弟子屈町2023.10.)
「キクイモ」はその名の通り、「キク」の花が咲き「イモ」を作ります。今は外来種という位置づけになっていますが、実は長きにわたって世界各地の人間の食文化に深く根付いている植物です。
その理由は寒さ暑さにも耐え、生育地も選り好みしない種であるということ。ジャガイモ栽培に向かないような乾燥地や瘦せた土地で重要な農作物として栽培されていたりして、外来種ながら有用な植物と扱われてきました。中国、東南アジア、ヨーロッパなどで古くから食されていて、シチューやパイなどさまざまな料理に使われています。
日本でも過去に救荒植物として栽培されていました。4~6月ころ新芽をてんぷらにしたり、ゆでて水にさらしてからおひたしや炒め物にしたりしました。そしてキクイモのイモはジャガイモに比べでんぷんが少なく低カロリー♪多く含まれるイヌリンという物質は食物繊維を豊富に含むことから腸内環境の改善に効果があり、血糖値の上昇を抑えて糖尿病予防にもよいとされているので、今でも健康食品や町おこしとして積極的に栽培しているところもあります。独特の香りと甘み、歯ざわりで、皮をむいて輪切りにしてから酢水につけてあく抜きをし、味噌や酢で漬けたりサラダやてんぷらにしいただくとよいでしょう。煮物にするときは煮崩れしないように皮付きのまま茹でこぼして含め煮にします。見た目より火が通りやすいのでご注意を。
またイモは果糖やアルコールの発酵原料とされ、キクイモ焼酎は全国各地で作られています。そのため別名や地方名が、「カライモ」「シシイモ」「ブタイモ」「イモギク」などなどたくさんあります。
明治のころ北海道で栽培されていたのは飼料用で「ブタイモ(豚芋)」と呼ばれ、特に葉が利用されていました。イモの方は家畜の腸内で発酵してしまうことから大量に与えてはいけないようです。
キクイモによく似た種で「イヌキクイモ」「キクイモモドキ」というのもあります。
「イヌキクイモ」の方は 「少し前の図鑑などではイヌキクイモという種族もいたが、今は消えつつある。・・・我が国でも整理したところ、イヌキクイモはキクイモの一形態ということで軟着陸を見ている。(帰化&外来植物950種)」とあるので、キクイモと分類してよさそうです。撮影した写真の中に「イヌキクイモ」らしきものがあったので、参考までに最後に掲載しておきます。
キクイモモドキは「キクイモモドキ属」で属性が違います。キクイモとの見てわかる違いは
「葉が上から下まですべて対生すること」
「葉の表面の毛はまばらで裏面も葉脈上だけ(キクイモは表裏とも密生)」
「葉の形が長い三角形で鋭い鋸歯の先がは尖る(キクイモの葉は丸みのある楕円形で浅い鋸歯の先は丸い)」
「イモ(茎塊)はできない」
という点です。
留意しておきたいのは、キクイモモドキは別名「宿根ヒメヒマワリ(キクイモモドキ属)」といい、それとは別にヒマワリ属にも「ヒメヒマワリ」があります。早口言葉ができそうなほどのややこしさです(汗)この2種の大きな違いは葉のつき方で、対生していれば前者のキクイモモドキ、互生していれば後者のヒメヒマワリだそうです。
キクイモは現在でも有用植物として栽培している地域もあるので、適切に扱えばそれほど心配するほどの種ではないのかな?と個人的には思っています。
駆除するにはキクイモを引っこ抜いてイモをいただき、キクイモモドキはイモはないけれどどちらも切り花はいい具合に長持ちしてくれるので、地道にイモと花を採り続けていればそのうちなくなるのではないかと思います。
ちなみに花の後にたくさんの種がつきますが、3倍体のため発芽できる種子をほとんど含まないらしいです。
日当たりの良い場所を好むようです。茎は分枝し高く伸びます。

(北海道弟子屈町2023.10.)
花の様子。舌状花は10~20個、中心の筒状花は多数あります。

(北海道弟子屈町2023.10.)
蕾の様子。総苞は半球形で総苞片は3列に並び、先が反り返ります。

(北海道弟子屈町2023.10.)
茎の様子。荒い毛が密生します。

(北海道弟子屈町2023.10.)
葉の様子。長さ10㎝程度。基部は葉柄に流れて翼になります。

(北海道弟子屈町2023.10.)
葉の裏の様子。表裏とも荒い毛が密生しています。

(北海道弟子屈町2023.10.)
群生している様子。3mくらいまで高くなるキクイモ、まるでキクイモ林のようになります。


(北海道弟子屈町2023.10.)
ここからは参考までに。イヌキクイモらしき個体。
花びらはかなり細いです。

(北海道鶴居村2023.9.)
葉の様子。かなり細く、上部まで対生していたのでキクイモモドキかと思いましたが、表裏ともかなり毛が密生しています。



(北海道鶴居村2023.9.)
イヌキクイモかと思ったきっかけは地下のイモ。円錐形のイモがついていました。



左がイヌキクイモらしき個体、右がキクイモ。



左がキクイモ、右がイヌキクイモらしき個体。

<特徴>
・ 北アメリカ原産。
・ 多年性草本
・ 花期は7~10月
・ 高さ1~3m
・ 花は茎の上部から伸びた花茎に1個付く。頭花は黄色で直径6~8㎝。内側に筒状花が多数集まり、まわりに10~20個の鮮黄色の舌状花が一列に並ぶ。花弁の幅は狭く先が尖る。総苞は半球形で総苞片は3列に並び、先が反り返る。
・ 葉は細長い卵形~卵状楕円形で先が尖り、長さ10㎝程度。縁に荒い鋸歯があり、基部は葉柄に流れて翼となる。茎の上方では互生し、下方では対生する。茎葉全体に荒い毛が密生する。茎は分枝して高く伸びる。
・ 種がたくさんついているように見えるが、3倍体のため発芽できる種子をほとんど含まないらしい。
・ 地下の節から長い匍匐茎を出して、その先に里芋のような塊茎を多数つくる。塊茎は厚さ3~6㎝、長さ7~10㎝程度のでこぼこした不整形。芽の部分は隆起する。
キク科ヒマワリ属
(北海道弟子屈町2023.10.)
「キクイモ」はその名の通り、「キク」の花が咲き「イモ」を作ります。今は外来種という位置づけになっていますが、実は長きにわたって世界各地の人間の食文化に深く根付いている植物です。
その理由は寒さ暑さにも耐え、生育地も選り好みしない種であるということ。ジャガイモ栽培に向かないような乾燥地や瘦せた土地で重要な農作物として栽培されていたりして、外来種ながら有用な植物と扱われてきました。中国、東南アジア、ヨーロッパなどで古くから食されていて、シチューやパイなどさまざまな料理に使われています。
日本でも過去に救荒植物として栽培されていました。4~6月ころ新芽をてんぷらにしたり、ゆでて水にさらしてからおひたしや炒め物にしたりしました。そしてキクイモのイモはジャガイモに比べでんぷんが少なく低カロリー♪多く含まれるイヌリンという物質は食物繊維を豊富に含むことから腸内環境の改善に効果があり、血糖値の上昇を抑えて糖尿病予防にもよいとされているので、今でも健康食品や町おこしとして積極的に栽培しているところもあります。独特の香りと甘み、歯ざわりで、皮をむいて輪切りにしてから酢水につけてあく抜きをし、味噌や酢で漬けたりサラダやてんぷらにしいただくとよいでしょう。煮物にするときは煮崩れしないように皮付きのまま茹でこぼして含め煮にします。見た目より火が通りやすいのでご注意を。
またイモは果糖やアルコールの発酵原料とされ、キクイモ焼酎は全国各地で作られています。そのため別名や地方名が、「カライモ」「シシイモ」「ブタイモ」「イモギク」などなどたくさんあります。
明治のころ北海道で栽培されていたのは飼料用で「ブタイモ(豚芋)」と呼ばれ、特に葉が利用されていました。イモの方は家畜の腸内で発酵してしまうことから大量に与えてはいけないようです。
キクイモによく似た種で「イヌキクイモ」「キクイモモドキ」というのもあります。
「イヌキクイモ」の方は 「少し前の図鑑などではイヌキクイモという種族もいたが、今は消えつつある。・・・我が国でも整理したところ、イヌキクイモはキクイモの一形態ということで軟着陸を見ている。(帰化&外来植物950種)」とあるので、キクイモと分類してよさそうです。撮影した写真の中に「イヌキクイモ」らしきものがあったので、参考までに最後に掲載しておきます。
キクイモモドキは「キクイモモドキ属」で属性が違います。キクイモとの見てわかる違いは
「葉が上から下まですべて対生すること」
「葉の表面の毛はまばらで裏面も葉脈上だけ(キクイモは表裏とも密生)」
「葉の形が長い三角形で鋭い鋸歯の先がは尖る(キクイモの葉は丸みのある楕円形で浅い鋸歯の先は丸い)」
「イモ(茎塊)はできない」
という点です。
留意しておきたいのは、キクイモモドキは別名「宿根ヒメヒマワリ(キクイモモドキ属)」といい、それとは別にヒマワリ属にも「ヒメヒマワリ」があります。早口言葉ができそうなほどのややこしさです(汗)この2種の大きな違いは葉のつき方で、対生していれば前者のキクイモモドキ、互生していれば後者のヒメヒマワリだそうです。
キクイモは現在でも有用植物として栽培している地域もあるので、適切に扱えばそれほど心配するほどの種ではないのかな?と個人的には思っています。
駆除するにはキクイモを引っこ抜いてイモをいただき、キクイモモドキはイモはないけれどどちらも切り花はいい具合に長持ちしてくれるので、地道にイモと花を採り続けていればそのうちなくなるのではないかと思います。
ちなみに花の後にたくさんの種がつきますが、3倍体のため発芽できる種子をほとんど含まないらしいです。
日当たりの良い場所を好むようです。茎は分枝し高く伸びます。
(北海道弟子屈町2023.10.)
花の様子。舌状花は10~20個、中心の筒状花は多数あります。
(北海道弟子屈町2023.10.)
蕾の様子。総苞は半球形で総苞片は3列に並び、先が反り返ります。
(北海道弟子屈町2023.10.)
茎の様子。荒い毛が密生します。
(北海道弟子屈町2023.10.)
葉の様子。長さ10㎝程度。基部は葉柄に流れて翼になります。
(北海道弟子屈町2023.10.)
葉の裏の様子。表裏とも荒い毛が密生しています。
(北海道弟子屈町2023.10.)
群生している様子。3mくらいまで高くなるキクイモ、まるでキクイモ林のようになります。
(北海道弟子屈町2023.10.)
ここからは参考までに。イヌキクイモらしき個体。
花びらはかなり細いです。
(北海道鶴居村2023.9.)
葉の様子。かなり細く、上部まで対生していたのでキクイモモドキかと思いましたが、表裏ともかなり毛が密生しています。
(北海道鶴居村2023.9.)
イヌキクイモかと思ったきっかけは地下のイモ。円錐形のイモがついていました。
左がイヌキクイモらしき個体、右がキクイモ。
左がキクイモ、右がイヌキクイモらしき個体。
<特徴>
・ 北アメリカ原産。
・ 多年性草本
・ 花期は7~10月
・ 高さ1~3m
・ 花は茎の上部から伸びた花茎に1個付く。頭花は黄色で直径6~8㎝。内側に筒状花が多数集まり、まわりに10~20個の鮮黄色の舌状花が一列に並ぶ。花弁の幅は狭く先が尖る。総苞は半球形で総苞片は3列に並び、先が反り返る。
・ 葉は細長い卵形~卵状楕円形で先が尖り、長さ10㎝程度。縁に荒い鋸歯があり、基部は葉柄に流れて翼となる。茎の上方では互生し、下方では対生する。茎葉全体に荒い毛が密生する。茎は分枝して高く伸びる。
・ 種がたくさんついているように見えるが、3倍体のため発芽できる種子をほとんど含まないらしい。
・ 地下の節から長い匍匐茎を出して、その先に里芋のような塊茎を多数つくる。塊茎は厚さ3~6㎝、長さ7~10㎝程度のでこぼこした不整形。芽の部分は隆起する。