2021年10月23日
ボタンウキクサ
ボタンウキクサ(牡丹浮草) Pistia stratiotes L.
<肩書>
・ 外来生物法「特定外来生物」
・ 生態系被害防止外来種リスト「緊急対策外来種」
・ 「日本の侵略的外来種ワースト100」
サトイモ科ボタンウキクサ属
(屋久島町椨川2017.8.)
その名の通り、水面にボタンの花が咲くように葉を広げて浮かぶ熱帯性の水草です。表面にビロード状のやわらかい毛が生えていて、撥水しているその様子も美しいです。
花は夏~秋頃、葉の隙間に、サトイモ科に特徴的な仏炎苞に包まれた小さな花をつけますが、あまり目立ちません。美しい花は咲きませんが、形のおもしろさと水面で育てられる手軽さで、ビオトープや金魚用の浮草などとして広く流通しました。
一時は園芸店、ホームセンター、ペットショップなどで幅広く流通・販売されていました。
原産地は南アメリカまたはアフリカという記載が多いですが、詳細は不明です。世界ではアジア、オーストラリア、南北アメリカの暖帯~熱帯に分布。日本に来たのは1920年代、沖縄・小笠原に導入されたそうです。その後1990年代から関西以西にどんどん広がりました。
急速に広がった大きな要因は、その繁殖スピードと考えられます。根元から水面に走出枝を伸ばし、その先に子株をつけてどんどん増え、あっという間に水面を覆いつくします。そして走出枝は折れやすく、水の流れに乗って周辺へ広がっていきます。ボタンの花のように広がった分厚い葉の内部は空洞が多くスカスカで、この浮袋のような葉が高い浮遊力の要因です。花から結実して、種子での繁殖も可能です。無機栄養分の吸収力が強く、耐塩性もあり、池沼、河川、水田、水路など様々な水域に生育することができます。土に根を張らせた方が生育が良くなるようで、水深が浅い方がより繁茂しやすいようです。厄介なことに、アレロパシーによる他の水生植物抑制も報告されています。
その反面寒さには弱く、冬季の水温が15~20℃程度ないと枯れてしまいます。平均水温12℃程度あれば持ちこたえて、子株の形成が可能との報告もあります。日本に入ってきたころには沖縄以外では越冬できず、一年草だったようですが、最近では九州以南では野外で越冬・増殖できるようになりました。関東でも条件が整えば越冬できるようです。また工場などからの温かい排水の影響で冬も水温があまり下がらない場所では、枯れずに冬を越せるようです。
大量に繁茂した植物体、さらに場所によっては冬に全部枯れたたくさんの残骸が、水質悪化につながります。そして在来種との競合、アレロパシー作用による他の水生植物の抑制、過剰な繁殖で水面を覆いつくし、水路を塞ぎ、水中の光や酸素の不足から水中に生きる生物の生育環境の悪化の原因となります。
日本だけではなく世界各国で帰化し大繁殖が問題となっていますが、駆除は物理的な方法がほとんどで、熊手で引き寄せたり、あるいは重機で掬い上げたりします。ボタンウキクサに限らず、浮遊植物の駆除は水の汚染の心配もあることから除草剤を使うのは難しく、手を焼いている地域が多いようです。
ということで当然のように、日本の侵略的外来種ワースト100であり、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づく「特定外来生物」にも指定されています。
ちなみに、「ウォーターレタスwater lettuce」「ウォーターキャベツwater cabbage」という英名が付いていますが、見た目からの名前で、基本的に食用にはなりません。ビロード状の毛がトゲのような食感になり、のどがチクチクするそうです。うがいをしても残るほどで、さらに苦みもあるとのこと。しかし、東南アジアでは食用としている地域があったり、中国では発汗や利尿作用があるとして薬用に用いられている地域もあるそうです。
生育地の様子。あっという間に数が増えていきます
(屋久島町宮之浦2018.3.)
葉の様子。ビロード状の毛がたくさん生えていて、とても触り心地がよく、撥水性も高いです。
(屋久島町椨川2017.8.)
根の様子。糸状の根がたくさん伸びています。
(屋久島町椨川2017.8.)
走出枝から出た子株。小さいうちは水面上に葉が浮いています。
(屋久島町椨川2017.8.)
大きくなると水面から立ち上がった葉がついてきます。
(屋久島町椨川2017.8.)
どんどん増えて、水面の隙間にぐいぐい入り込んでいきます。
(屋久島町椨川2017.8.)
<特徴>
・ 原産地の詳細は不明(南アメリカまたはアフリカとされている)
・ 常緑多年生草本(浮遊性) 1属1種。
・ サトイモ科としては例外的な水草であり、他に似た種がないためボタンウキクサ属の1属1種だが、植物系統進化的にウキクサ科に近いと考えられている。
・ 花期は5~10月(暖地では周年)
・ 花は0.5~1㎝程度で葉の隙間に咲く。白っぽく目立たないが、小さいながらも仏炎苞の中に肉穂花序がつくという、サトイモ科の特徴的な花をつける。
・ 高さ10㎝程度。葉は先の丸い広卵形~扇形でロゼット状に重なってつく。白緑色で縦にしわがあり、ビロード状の細かい毛に覆われて水をはじく。葉の付け根から細い走出枝を伸ばし、その先に子株ができる。下部が小さいうちは水面に葉を平らに浮かべ、大きくなると立ち上がり、サニーレタスのような感じになる。下部に多数のひげ根が伸びる。根は糸状で枝分かれしない。
<肩書>
・ 外来生物法「特定外来生物」
・ 生態系被害防止外来種リスト「緊急対策外来種」
・ 「日本の侵略的外来種ワースト100」
サトイモ科ボタンウキクサ属
(屋久島町椨川2017.8.)
その名の通り、水面にボタンの花が咲くように葉を広げて浮かぶ熱帯性の水草です。表面にビロード状のやわらかい毛が生えていて、撥水しているその様子も美しいです。
花は夏~秋頃、葉の隙間に、サトイモ科に特徴的な仏炎苞に包まれた小さな花をつけますが、あまり目立ちません。美しい花は咲きませんが、形のおもしろさと水面で育てられる手軽さで、ビオトープや金魚用の浮草などとして広く流通しました。
一時は園芸店、ホームセンター、ペットショップなどで幅広く流通・販売されていました。
原産地は南アメリカまたはアフリカという記載が多いですが、詳細は不明です。世界ではアジア、オーストラリア、南北アメリカの暖帯~熱帯に分布。日本に来たのは1920年代、沖縄・小笠原に導入されたそうです。その後1990年代から関西以西にどんどん広がりました。
急速に広がった大きな要因は、その繁殖スピードと考えられます。根元から水面に走出枝を伸ばし、その先に子株をつけてどんどん増え、あっという間に水面を覆いつくします。そして走出枝は折れやすく、水の流れに乗って周辺へ広がっていきます。ボタンの花のように広がった分厚い葉の内部は空洞が多くスカスカで、この浮袋のような葉が高い浮遊力の要因です。花から結実して、種子での繁殖も可能です。無機栄養分の吸収力が強く、耐塩性もあり、池沼、河川、水田、水路など様々な水域に生育することができます。土に根を張らせた方が生育が良くなるようで、水深が浅い方がより繁茂しやすいようです。厄介なことに、アレロパシーによる他の水生植物抑制も報告されています。
その反面寒さには弱く、冬季の水温が15~20℃程度ないと枯れてしまいます。平均水温12℃程度あれば持ちこたえて、子株の形成が可能との報告もあります。日本に入ってきたころには沖縄以外では越冬できず、一年草だったようですが、最近では九州以南では野外で越冬・増殖できるようになりました。関東でも条件が整えば越冬できるようです。また工場などからの温かい排水の影響で冬も水温があまり下がらない場所では、枯れずに冬を越せるようです。
大量に繁茂した植物体、さらに場所によっては冬に全部枯れたたくさんの残骸が、水質悪化につながります。そして在来種との競合、アレロパシー作用による他の水生植物の抑制、過剰な繁殖で水面を覆いつくし、水路を塞ぎ、水中の光や酸素の不足から水中に生きる生物の生育環境の悪化の原因となります。
日本だけではなく世界各国で帰化し大繁殖が問題となっていますが、駆除は物理的な方法がほとんどで、熊手で引き寄せたり、あるいは重機で掬い上げたりします。ボタンウキクサに限らず、浮遊植物の駆除は水の汚染の心配もあることから除草剤を使うのは難しく、手を焼いている地域が多いようです。
ということで当然のように、日本の侵略的外来種ワースト100であり、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づく「特定外来生物」にも指定されています。
ちなみに、「ウォーターレタスwater lettuce」「ウォーターキャベツwater cabbage」という英名が付いていますが、見た目からの名前で、基本的に食用にはなりません。ビロード状の毛がトゲのような食感になり、のどがチクチクするそうです。うがいをしても残るほどで、さらに苦みもあるとのこと。しかし、東南アジアでは食用としている地域があったり、中国では発汗や利尿作用があるとして薬用に用いられている地域もあるそうです。
生育地の様子。あっという間に数が増えていきます
(屋久島町宮之浦2018.3.)
葉の様子。ビロード状の毛がたくさん生えていて、とても触り心地がよく、撥水性も高いです。
(屋久島町椨川2017.8.)
根の様子。糸状の根がたくさん伸びています。
(屋久島町椨川2017.8.)
走出枝から出た子株。小さいうちは水面上に葉が浮いています。
(屋久島町椨川2017.8.)
大きくなると水面から立ち上がった葉がついてきます。
(屋久島町椨川2017.8.)
どんどん増えて、水面の隙間にぐいぐい入り込んでいきます。
(屋久島町椨川2017.8.)
<特徴>
・ 原産地の詳細は不明(南アメリカまたはアフリカとされている)
・ 常緑多年生草本(浮遊性) 1属1種。
・ サトイモ科としては例外的な水草であり、他に似た種がないためボタンウキクサ属の1属1種だが、植物系統進化的にウキクサ科に近いと考えられている。
・ 花期は5~10月(暖地では周年)
・ 花は0.5~1㎝程度で葉の隙間に咲く。白っぽく目立たないが、小さいながらも仏炎苞の中に肉穂花序がつくという、サトイモ科の特徴的な花をつける。
・ 高さ10㎝程度。葉は先の丸い広卵形~扇形でロゼット状に重なってつく。白緑色で縦にしわがあり、ビロード状の細かい毛に覆われて水をはじく。葉の付け根から細い走出枝を伸ばし、その先に子株ができる。下部が小さいうちは水面に葉を平らに浮かべ、大きくなると立ち上がり、サニーレタスのような感じになる。下部に多数のひげ根が伸びる。根は糸状で枝分かれしない。