2021年07月31日
オオフサモ
オオフサモ(大房藻)Myriophyllum aquaticum
<肩書>
・ 外来生物法「特定外来生物」
・ 生態系被害防止外来種リスト「緊急対策外来種」
・ 「日本の侵略的外来種ワースト100」
アリノトウグサ科フサモ属
(屋久島町椨川2017.6.)
日本にはアクアリウムなどの観賞用として持ち込まれました。一応沈水状態でも見られますが、赤みを帯びて葉の裂片は長細く繊細になって、あまり長持ちしないことが多いようです。どちらかというと水面から立ち上がって抽水状態になった方が元気満々で、驚異の繁殖力を発揮します。水槽内での美しさはあまり期待できないので、レイアウトには使いにくく、アクアリウムの方ではそれほど人気度は上がらなかったようです。
河川の自然復元事業の現場や「ビオトープ」において、水質浄化機能があるという理由で植栽されていた経緯もあります。
原産地は南アメリカのアマゾン川で、1800年代にはすでに北アメリカに持ち込まれ、1900年代に南アフリカ、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどに定着、温暖な気候を好むことからか、現在ではほぼ世界各地に分布しています。しかし世界各地に広がっているのはほとんど雌株で、雄株は南アメリカ以外では確認されていません。
世界中で広がった最大の要因が繁殖の能力です。前述のとおり原産地の周辺以外には雌株しか広がっていないので、基本的に種子生産は確認されていません。栄養繁殖がとてつもなく旺盛で、地下茎だけでなく切れ藻程度でも簡単に繁殖することができます。そして最終的には水路や湖沼の水面全体を覆いつくすほど大繁茂するので、在来種の生育を妨げたり、水流を阻害したり、さらに水質悪化させたりする被害も懸念されています。
この種の駆除が難しい原因は、旺盛な繁殖力だけではありません。オオフサモの植物体の表面は「クチクラ層」というツヤのある表面で保護されていて、除草剤が効きにくい性質を持ち合わせています。
さらに、南米原産でありながら、日本の気候での越冬も可能なレベルの耐寒性があります。越冬芽は形成せず、主に茎下部の葉を落とした状態や根茎の状態で、沈水状態で越冬しているようです。
物理的にも、化学的にも、生物的にも、とことんやっかいな植物なのです。
周知のとおり日本では、生態系被害防止外来種リスト「総合対策外来種」、日本生態学会「日本の侵略的外来種ワースト100」、外来生物法「特定外来生物」に指定され、持ち込み・栽培・移動・販売などの一切が禁止されています。
オーストラリアでも持ち込みが規制されています。アメリカでは全土ではありませんが、全面的に販売禁止になっているところもあるようです。
ちなみに日本の在来種である「ホザキノフサモ」も、海外では侵略的外来種として問題視されています。
日本での記録は、1920年頃にドイツ人によって持ち込まれ、兵庫県神戸市の須磨寺の池で野生化したのが初めて見つかりました。その後ほぼ日本全土に分布が拡大。北海道から沖縄まで広がりました。
九州筑後川水系などで、過剰に繁茂した準群落が水流を妨げて、問題になっている事例があります。また、茨城県霞ケ浦でも、湖の一部や周辺水路で大繁茂し、在来種への影響が危惧されて駆除事業が行われています。
アクアリウム資材として販売されていた頃は、別名のパロット・フェザー(オウムの羽という意味)という名前でご存じの方もいるかもしれません。他にも「ヌマフサモ」や最初に帰化が確認された地にちなんで「スマフサモ」という名前もあります。
最強エイリアンのような印象のオオフサモですが、アメリカのフロリダ州ではカミナリハムシの仲間が幼虫の寄生先としてオオフサモを利用しているのが発見されたそうです。時の流れに任せて、定着地で存在感を見せているところもあるようです。
現在、在来には4種のフサモ属がありますが、草体は小さく、タチモ以外は通常沈水状態で生育します。
●オグラノフサモ(M.oguraense) : 中~やや富栄養でアルカリ性の湖沼、ため池、水路などに生育。花茎はフサモと同様上部に雄花、下部に雌花をつける。フサモとは殖芽で見分ける。殖芽は6~8㎝の長い根棒状。殖芽葉は板状で裂片の幅は広く、裂片間はV字状となる。
●ホザキノフサモ(M.spicatum) : 湖沼、河川、ため池などに生育。葉は4輪生。花茎には気中葉をつけず、上部に雄花と雌花をつける。殖芽を作らない。
●タチモ(M.ussuriense) : 貧栄養~中栄養のため池の浅水域や水辺に生育。沈水葉は羽状に細裂して極めて繊細。羽片は10個以下。花は抽水から陸生形の水上茎の葉腋につく。雌雄異株。
●フサモ(M.verticillatum) : 山間のため池など貧栄養な水域に生育。葉は4~5輪生。家系には気中葉をつけ、上部に雄花、下部に雌花をつける。
葉と茎の様子。茎の節の様子が、なんとなくスギナっぽいでしょうか・・・
(屋久島町椨川2017.6.)
真上から見た様子。
(屋久島町椨川2017.6.)
わずかな水域でほかの植物が繁茂していても、隙間をぬってどんどん増えていきます。
(屋久島町椨川2017.6.)
クチクラ層の性質か少し白みがかった緑色で、傷つきにくいのかどれもきれいな羽状葉です。
(屋久島町椨川2017.6.)
一旦入り込んだエリアから、どんどん純群落を作っていました。
(屋久島町椨川2017.6.)
<特徴>
・ 南米原産(アマゾン川)。
・ 多年生の抽水植物。淡水性で湖沼やため池、河川、水路などに生育。
・ 雌雄異株で、日本国内に定着しているのは雌株のみ。(栄養繁殖している)
・ 花期は5~6月。
・ 花は6~15cmの葉の基部につける。雌花は円筒状で高さ2㎜の白緑色の子房、柱頭周囲に角状の4がく片を持つが、花弁はない。
・ 茎は円柱状で太さ4~6㎜、泥中または水中で分岐しながらほふくして、1m以上に達する。茎には多数の節があり、節から白い糸状の根を出す。水上茎は高さ10~30㎝。
・ 葉は粉白色を帯びた緑青色の羽状葉で長さ2~5㎝、各節に3~7枚輪生する。小葉片は長さ3~5㎜、幅1mm、10~20対ある。葉の基部左右に白色短小の毛状托葉があり、若葉には微毛が粗生する。
・ 主に根茎で越冬するが、九州以南では地上部も完全に枯死することなく越冬することもある。
<肩書>
・ 外来生物法「特定外来生物」
・ 生態系被害防止外来種リスト「緊急対策外来種」
・ 「日本の侵略的外来種ワースト100」
アリノトウグサ科フサモ属
(屋久島町椨川2017.6.)
日本にはアクアリウムなどの観賞用として持ち込まれました。一応沈水状態でも見られますが、赤みを帯びて葉の裂片は長細く繊細になって、あまり長持ちしないことが多いようです。どちらかというと水面から立ち上がって抽水状態になった方が元気満々で、驚異の繁殖力を発揮します。水槽内での美しさはあまり期待できないので、レイアウトには使いにくく、アクアリウムの方ではそれほど人気度は上がらなかったようです。
河川の自然復元事業の現場や「ビオトープ」において、水質浄化機能があるという理由で植栽されていた経緯もあります。
原産地は南アメリカのアマゾン川で、1800年代にはすでに北アメリカに持ち込まれ、1900年代に南アフリカ、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどに定着、温暖な気候を好むことからか、現在ではほぼ世界各地に分布しています。しかし世界各地に広がっているのはほとんど雌株で、雄株は南アメリカ以外では確認されていません。
世界中で広がった最大の要因が繁殖の能力です。前述のとおり原産地の周辺以外には雌株しか広がっていないので、基本的に種子生産は確認されていません。栄養繁殖がとてつもなく旺盛で、地下茎だけでなく切れ藻程度でも簡単に繁殖することができます。そして最終的には水路や湖沼の水面全体を覆いつくすほど大繁茂するので、在来種の生育を妨げたり、水流を阻害したり、さらに水質悪化させたりする被害も懸念されています。
この種の駆除が難しい原因は、旺盛な繁殖力だけではありません。オオフサモの植物体の表面は「クチクラ層」というツヤのある表面で保護されていて、除草剤が効きにくい性質を持ち合わせています。
さらに、南米原産でありながら、日本の気候での越冬も可能なレベルの耐寒性があります。越冬芽は形成せず、主に茎下部の葉を落とした状態や根茎の状態で、沈水状態で越冬しているようです。
物理的にも、化学的にも、生物的にも、とことんやっかいな植物なのです。
周知のとおり日本では、生態系被害防止外来種リスト「総合対策外来種」、日本生態学会「日本の侵略的外来種ワースト100」、外来生物法「特定外来生物」に指定され、持ち込み・栽培・移動・販売などの一切が禁止されています。
オーストラリアでも持ち込みが規制されています。アメリカでは全土ではありませんが、全面的に販売禁止になっているところもあるようです。
ちなみに日本の在来種である「ホザキノフサモ」も、海外では侵略的外来種として問題視されています。
日本での記録は、1920年頃にドイツ人によって持ち込まれ、兵庫県神戸市の須磨寺の池で野生化したのが初めて見つかりました。その後ほぼ日本全土に分布が拡大。北海道から沖縄まで広がりました。
九州筑後川水系などで、過剰に繁茂した準群落が水流を妨げて、問題になっている事例があります。また、茨城県霞ケ浦でも、湖の一部や周辺水路で大繁茂し、在来種への影響が危惧されて駆除事業が行われています。
アクアリウム資材として販売されていた頃は、別名のパロット・フェザー(オウムの羽という意味)という名前でご存じの方もいるかもしれません。他にも「ヌマフサモ」や最初に帰化が確認された地にちなんで「スマフサモ」という名前もあります。
最強エイリアンのような印象のオオフサモですが、アメリカのフロリダ州ではカミナリハムシの仲間が幼虫の寄生先としてオオフサモを利用しているのが発見されたそうです。時の流れに任せて、定着地で存在感を見せているところもあるようです。
現在、在来には4種のフサモ属がありますが、草体は小さく、タチモ以外は通常沈水状態で生育します。
●オグラノフサモ(M.oguraense) : 中~やや富栄養でアルカリ性の湖沼、ため池、水路などに生育。花茎はフサモと同様上部に雄花、下部に雌花をつける。フサモとは殖芽で見分ける。殖芽は6~8㎝の長い根棒状。殖芽葉は板状で裂片の幅は広く、裂片間はV字状となる。
●ホザキノフサモ(M.spicatum) : 湖沼、河川、ため池などに生育。葉は4輪生。花茎には気中葉をつけず、上部に雄花と雌花をつける。殖芽を作らない。
●タチモ(M.ussuriense) : 貧栄養~中栄養のため池の浅水域や水辺に生育。沈水葉は羽状に細裂して極めて繊細。羽片は10個以下。花は抽水から陸生形の水上茎の葉腋につく。雌雄異株。
●フサモ(M.verticillatum) : 山間のため池など貧栄養な水域に生育。葉は4~5輪生。家系には気中葉をつけ、上部に雄花、下部に雌花をつける。
葉と茎の様子。茎の節の様子が、なんとなくスギナっぽいでしょうか・・・
(屋久島町椨川2017.6.)
真上から見た様子。
(屋久島町椨川2017.6.)
わずかな水域でほかの植物が繁茂していても、隙間をぬってどんどん増えていきます。
(屋久島町椨川2017.6.)
クチクラ層の性質か少し白みがかった緑色で、傷つきにくいのかどれもきれいな羽状葉です。
(屋久島町椨川2017.6.)
一旦入り込んだエリアから、どんどん純群落を作っていました。
(屋久島町椨川2017.6.)
<特徴>
・ 南米原産(アマゾン川)。
・ 多年生の抽水植物。淡水性で湖沼やため池、河川、水路などに生育。
・ 雌雄異株で、日本国内に定着しているのは雌株のみ。(栄養繁殖している)
・ 花期は5~6月。
・ 花は6~15cmの葉の基部につける。雌花は円筒状で高さ2㎜の白緑色の子房、柱頭周囲に角状の4がく片を持つが、花弁はない。
・ 茎は円柱状で太さ4~6㎜、泥中または水中で分岐しながらほふくして、1m以上に達する。茎には多数の節があり、節から白い糸状の根を出す。水上茎は高さ10~30㎝。
・ 葉は粉白色を帯びた緑青色の羽状葉で長さ2~5㎝、各節に3~7枚輪生する。小葉片は長さ3~5㎜、幅1mm、10~20対ある。葉の基部左右に白色短小の毛状托葉があり、若葉には微毛が粗生する。
・ 主に根茎で越冬するが、九州以南では地上部も完全に枯死することなく越冬することもある。