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2022年09月08日

ムラサキウマゴヤシ

ムラサキウマゴヤシ(紫馬肥)Medicago sativa L.

マメ科ウマゴヤシ属
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.6.)

ムラサキウマゴヤシ=紫色の花の牧草と、分かりやすい名前です。別名の「アルファルファ」も有名ですね。知っている方も聞いたことがある方も、普段から食べている方もいらっしゃるかもしれません。野菜コーナーで売ってるアルファルファは、ムラサキウマゴヤシのスプラウトです。

紀元前5世紀のペルシャ戦争でペルシャがギリシャに侵入した時、戦車を引く馬に道筋に生えていたムラサキウマゴヤシを食べさせていたという話があります。ペルシャでは古くからこのムラサキウマゴヤシを栽培しており、人が飼料作物として用いた最も古い植物と言われています。古代ギリシャ、ローマ時代から現代まで、優れた飼料として評価され、今も世界各地で利用されています。

「飼料の王様」と評されるほどのムラサキウマゴヤシ。評価の理由はいくつかあります。
まず栄養価の高さ。ビタミン、ミネラルが豊富で、特に葉はタンパク質の含有量が多く消化も良いです。土壌からの養分(窒素)吸収能力が高く、乾燥重量当たりの栄養価が極めて優れていることから、世界中で栽培されています。野生動物や家畜だけでなく、人間にとっても健康食品になっています。
スーパーで売ってるアルファルファ・スプラウト(播種後3~7日後の幼苗)は栄養価が高い食品です。種子を発芽させることでビタミンCが増え、ビタミンB群、カロテンを始めカルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄、リンを豊富に含み、食物繊維も多いので便秘改善も期待できます。
ただしその種子には、霊長類にとって毒となる「カナバニン」を含有しており、多量に摂取したり継続的に食べると健康に悪影響を及ぼす事もあるため注意が必要です。カナバニンは種子に含まれていて、発芽中にアミノ酸に変換されて減るので、販売しているスプラウトは大丈夫ですのでご心配なく。

葉や茎を粉砕して圧縮したものはサプリメントとしても利用されています。乾草やキューブとして海外から毎年約30万トンが輸入されています。
葉を乾燥させたものは緑色のハーブティーとして飲むこともでき、種子は黄色の染料にもなります。

また、マメ科特有の根粒菌の共生により、空気中の窒素を固定して蓄えることができるので、緑肥として使われることも多いです。それに加え、他の草花では到達できないような、地中5~10mに達する深い根を伸ばして水分を補給することから、乾燥してやせた土壌でも、漉き込んで管理することで年々豊かになります。

薬用としては、血液をサラサラにする薬「ワーファリン」の開発の基になったことでも知られています。
発端は1920年代にカナダで起こったスイートクローバー病。飼料の「スイートクローバー」を食べた牛が出血し、その出血が止まらなくなって次々と死んでしまったという、新しい牛の病気があります。
原因は「腐敗したスイートクローバーを食べたことによるもの」でした。発酵したスイートクローバーに発生したジクマロールという物質が原因だったのです。
スイートクローバーは名前の通り甘い香りのするクローバで、その桜餅のような匂いはクマリンという芳香物質です。スイートクローバーの発酵途中、微生物によってクマリンは「ジクマロール」というクマリン二量体に変化します。これがビタミンK(血液凝固因子)の働きを抑えて、血液をサラサラにします。
同じマメ科のムラサキウマゴヤシも発酵の過程でジクマロールが出来ることから、抗凝固薬「ワーファリン」が作られました。ちなみに、新鮮な植物体にはありません。

日本へは中国から江戸時代に渡来したといわれていますが、明治初期、北海道開拓史が牧草として導入したのが栽培の始まりです。今でも栽培されていますが、牧草としての利用よりも生食用のスプラウトとしての需要が多いです。
最初、多湿で酸性土壌の多い日本での生産は普及しませんでしたが、近年、北海道の北海道農業研究センター及び雪印種苗により耐病性・耐寒性を持たせた新品種が開発され、栽培が広まっています。

中国で苜蓿(モクシュク)、スイスではLuzern(ルツェルン)、その英名でLucerne(ルーサン)という名前もあります。Alfalfa(アルファルファ)はペルシャ語の「最良の草」がアラビア語を経由して英名になったものだそうです。

ウマゴヤシの仲間は他に「ウマゴヤシ」「トゲナシウマゴヤシ」「コメツブウマゴヤシ」などがありますが、ムラサキウマゴヤシ以外はみんな黄色い花です。


生育地の様子。ここは海岸線から数百m離れた砂地の場所です。周りはイネ科が優先していました。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.6.)

茎、葉の様子。上半分に鋸歯があります。全体的に毛がたくさん生えています。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.6.)

つぼみの様子。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.6.)

根元の様子。多数の茎を叢生しています。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.6.)

花の様子。20個前後の総状花序です。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.6.)

白っぽい花もあります。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.6.)

花の様子。マメ科特有の蝶形の花で1㎝くらい。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.8.)

しべは普通は竜骨弁に隠れて外から見えませんが、昆虫がやってきて受粉されると外に出てきます。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2022.6.)

豆果はくるくるとらせん状に巻きます。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.8.)

ひとつのさやの中には3つの種が入っていました。
ムラサキウマゴヤシ
(北海道石狩市石狩港2021.8.)

<特徴>
・ 地中海地方~西・中央アジア南部原産。世界に広く帰化している。
・ 多年性草本
・ 花期は5~9月
・ 花は1㎝くらいの蝶形花。茎の頂部に球形~やや細長い形の総状花序に10~20個の花を密につける。色は変化に富み、白色、淡黄色、薄紫色、青紫色、赤紫色などがある。竜骨弁の先はとがらない。萼片は5深裂して細く、先は鋭い。
・ 高さ0.3~1m
・ 葉は互生し、3小葉からなる奇数羽状複葉。小葉は長さ2~3㎝、幅0.5~1㎝。狭倒卵形~狭長楕円形で上半分に鋸歯がある。托葉は狭披針形で全縁か基部にのみ鋸歯がある。茎、葉には毛が多い。
・ 頑丈な根株から多数の茎を叢生する。茎は直立~斜上し、やや軟毛~無毛。途中からよく分枝する。水を求めて地中深くまで根を伸ばし、最大15mになることもある。
・ 果実は扁平な豆果で黒色に成熟する。棘はなく、軟毛が生えるか無毛で1~3回らせん状に巻く。さやの中には4~9個の種子が入っている。


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Posted by 野の花 at 17:31│Comments(0)青・紫
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