2021年07月08日
タチアワユキセンダングサ(シロノセンダングサ他)
タチアワユキセンダングサ Bidens pilosa var.radiata
シロノセンダングサ Bidens pilosa var.minor
<肩書>
・ 生態系被害防止外来種リスト「その他の総合対策外来種」
・ 「日本の侵略的外来種ワースト100」
キク科センダングサ属
(屋久島町安房2015.10.)
奄美大島や屋久島などでは季節を問わず、直径3cm程度の白い花が次から次へと咲きます。通年いつでも見られる超メジャーな花のひとつです。
実はこの種、変種がものすごく多い上に交雑までするので、図鑑によって名前や解説が混乱しています。植物分類の先生方もいろんな見解があるようで、アマチュアな私には理解するのがとても大変です。以下学名も記載するので、ちょっと難しくなります・・・
変種に分類されたものの種類が多く、さらにその別名もたくさんあるうえに文献によって違ったりして。
まず基本種の「コセンダングサ」に始まり、「コシロノセンダングサ」「シロバナノセンダングサ」「シロノセンダングサ」「アワユキセンダングサ」「タチアワユキセンダングサ」「ハイアワユキセンダングサ」「アイノコセンダングサ」「オオバナノセンダングサ」「マルバアワユキセンダングサ」。これらがお互いの別名になったりして、とにかく混迷しています。
分けるための大きなポイントは舌状花(花びら部分)の有無と大きさです。
●舌状花がなければ基本種のコセンダングサ(B. pilosa var.pilosa)
●舌状花が10mm以下の場合はシロバナノセンダングサ(B. albflora)、シロノセンダングサ、コシロノセンダングサ(以上 B. pilosa var.minor)、アワユキセンダングサ(B. pilosa var.bisetosa)、アイノコセンダングサ(B. pilosa var.intermedia)
●舌状花がもう少し大きく、頭花(花全体)の直径が3cmくらいまでの大きさになる場合はオオバナノセンダングサ、タチアワユキセンダングサ、シロノセンダングサ(以上 B. pilosa var.radiata)、ハイアワユキセンダングサ(B. pilosa var.radiata form.decumbens)、マルバアワユキセンダングサ(B. pilosa var.radiata form.indivisa)
(ちなみにこの段階で、「シロノセンダングサ」は舌状花10mm以下の「var.minor」を指す場合と、舌状花が大きくて頭花30mmの「var.radiata」を指す場合があります。文献によって異なります。)
ここから花以外の「痩果(種の部分)に棘が2本か否か」「その他の識別できる特徴(茎が這ってたり葉が単葉だったり)」などの要素で、さらに細かく分類されていきます。
私自身は、奄美大島で最初に学んだときは「シロノセンダングサ」で、屋久島では「タチアワユキセンダングサ」で覚えました。
とにかくややこしい種ですが、奄美のも屋久島のもおそらく一般的にいう「タチアワユキセンダングサ(もしくはオオバナノセンダングサ)B. pilosa var.radiata」とされる種でいいかと思います。
ちなみに、通年観察したところ、春夏は舌状花が3cmあったものが、秋冬近づいてくると舌状花がほとんど見えなくなって、コセンダングサなどと分類される姿に変化するものもありました。南国では通年の植物とはいえ、春夏に同定した方が間違いなさそうです。
さてこの仲間が日本にやってきたのは弘化年間(1844~1848)、観賞用として導入されたようです。野外への定着は、1963年に高知県で初記録されてから、西日本方面にあっという間に広がっていきました。ちなみに私の地元秋田の方では、舌状花のないアメリカセンダングサが一般的です。
昔から新芽や若葉、若い茎を炒め物や茹でてお浸しにして食べる地域もありますが、野草味がかなり強く、おいしく食べるのは難しそうです。発展途上国ではビタミンEの補給源としても評価されています。沖縄や徳之島など一部地域ではこの花から採った蜂蜜がありますが、これはとても香り高くおいしいので是非たくさん流通してほしいものです。
とはいえ、侵入地域では面倒な存在であることに変わりはありません。サトウキビ畑の強害雑草として除草されたり、純群落を作ることから在来草本植物との競合が懸念されています。
有効活用は少数派ですが、武蔵野免疫研究所を中心とする企業グループ「むさしのイミュニティーグループ」が温暖な沖縄県宮古島で清浄栽培し、宮古ビデンス・ピローサ(タチアワユキセンダングサの学名)と呼んで健康茶や健康食品、化粧品などの主要原料として使い、利用促進の研究をしています。
花の様子
(屋久島町安房2015.10.)
舌状花が多いタイプ。
(屋久島町安房2016.2.)
舌状花が10mm以下で、コシロノセンダングサなど別の種かと疑いたくなるものも。ちなみにこれは、周囲がすべて大きいタチアワユキセンダングサタイプで、この花一つだけがこんな状態でした。草刈りでいじけたタイプでしょうか。花だけ見ると、とても困ります。
(屋久島町小瀬田2017.6.)
葉の様子。対生しています。
(屋久島町安房2015.10.)
種の様子。突き出た2本の棘が動物や衣類に刺さって着き、ほかの場所へ移動して分布を広げていきます。沖縄地方で「サシグサ」と呼ばれる所以です。
(屋久島町小瀬田2015.9.)
屋久島や奄美大島では冬期(12~2月)でも花は咲き続け、通年種子を生産しています。発芽から開花までたった2ヵ月。超スピードです。
(屋久島町小瀬田2015.9.)
それゆえ、路傍から空き地までたくましく増え続けます。
(屋久島町小瀬田2015.9.)
旺盛な繁殖力で純群落を形成し通年でたくさんの花をつけるので、チョウやハチなどの虫たちの大切な吸密植物になっています。オオゴマダラが生息する喜界島でも、たくさんのタチアワユキセンダングサが生育していました。
アゲハチョウ来訪。夏型オスと思われます。
(屋久島町安房2017.7.)
クマバチ来訪。残念ながらオスメス区別がつけられないポジションでした。クマバチはの食性は蜜と花粉両方です。
(屋久島町安房2017.10.)
<特徴>
・ 南北アメリカ原産
・ 一年生~多年生草本
・ 花期は3~11月(南方では1年中)
・ 花は筒状花が黄色、舌状花が白色で大きく長さ10mmを超え、直径3cm程度の花をつける。茎の途中から短い枝を出し、総状に1~5個の花つける。
・ 高さ0.3~1m。
・ 葉は5小葉で構成される複葉で多くは対生するが下部で互生することもある。
・ 果実(痩果)は平たい4稜形で頂部に棘を持つ。
・ 分布は九州南部~沖縄(沖縄諸島,先島諸島),小笠原
・ 日当たりのよい原野、路傍、荒地に生育する。
参考までに、難しいセンダングサ属の分類に関してこちらのHPで詳しく紹介されています。(私の手には負えません…)
「雑草徘徊記」
http://homepage1.canvas.ne.jp/e_kamasai/Zassou/zassou/kiku/sendangusa/sendangusa.html
シロノセンダングサ Bidens pilosa var.minor
<肩書>
・ 生態系被害防止外来種リスト「その他の総合対策外来種」
・ 「日本の侵略的外来種ワースト100」
キク科センダングサ属
(屋久島町安房2015.10.)
奄美大島や屋久島などでは季節を問わず、直径3cm程度の白い花が次から次へと咲きます。通年いつでも見られる超メジャーな花のひとつです。
実はこの種、変種がものすごく多い上に交雑までするので、図鑑によって名前や解説が混乱しています。植物分類の先生方もいろんな見解があるようで、アマチュアな私には理解するのがとても大変です。以下学名も記載するので、ちょっと難しくなります・・・
変種に分類されたものの種類が多く、さらにその別名もたくさんあるうえに文献によって違ったりして。
まず基本種の「コセンダングサ」に始まり、「コシロノセンダングサ」「シロバナノセンダングサ」「シロノセンダングサ」「アワユキセンダングサ」「タチアワユキセンダングサ」「ハイアワユキセンダングサ」「アイノコセンダングサ」「オオバナノセンダングサ」「マルバアワユキセンダングサ」。これらがお互いの別名になったりして、とにかく混迷しています。
分けるための大きなポイントは舌状花(花びら部分)の有無と大きさです。
●舌状花がなければ基本種のコセンダングサ(B. pilosa var.pilosa)
●舌状花が10mm以下の場合はシロバナノセンダングサ(B. albflora)、シロノセンダングサ、コシロノセンダングサ(以上 B. pilosa var.minor)、アワユキセンダングサ(B. pilosa var.bisetosa)、アイノコセンダングサ(B. pilosa var.intermedia)
●舌状花がもう少し大きく、頭花(花全体)の直径が3cmくらいまでの大きさになる場合はオオバナノセンダングサ、タチアワユキセンダングサ、シロノセンダングサ(以上 B. pilosa var.radiata)、ハイアワユキセンダングサ(B. pilosa var.radiata form.decumbens)、マルバアワユキセンダングサ(B. pilosa var.radiata form.indivisa)
(ちなみにこの段階で、「シロノセンダングサ」は舌状花10mm以下の「var.minor」を指す場合と、舌状花が大きくて頭花30mmの「var.radiata」を指す場合があります。文献によって異なります。)
ここから花以外の「痩果(種の部分)に棘が2本か否か」「その他の識別できる特徴(茎が這ってたり葉が単葉だったり)」などの要素で、さらに細かく分類されていきます。
私自身は、奄美大島で最初に学んだときは「シロノセンダングサ」で、屋久島では「タチアワユキセンダングサ」で覚えました。
とにかくややこしい種ですが、奄美のも屋久島のもおそらく一般的にいう「タチアワユキセンダングサ(もしくはオオバナノセンダングサ)B. pilosa var.radiata」とされる種でいいかと思います。
ちなみに、通年観察したところ、春夏は舌状花が3cmあったものが、秋冬近づいてくると舌状花がほとんど見えなくなって、コセンダングサなどと分類される姿に変化するものもありました。南国では通年の植物とはいえ、春夏に同定した方が間違いなさそうです。
さてこの仲間が日本にやってきたのは弘化年間(1844~1848)、観賞用として導入されたようです。野外への定着は、1963年に高知県で初記録されてから、西日本方面にあっという間に広がっていきました。ちなみに私の地元秋田の方では、舌状花のないアメリカセンダングサが一般的です。
昔から新芽や若葉、若い茎を炒め物や茹でてお浸しにして食べる地域もありますが、野草味がかなり強く、おいしく食べるのは難しそうです。発展途上国ではビタミンEの補給源としても評価されています。沖縄や徳之島など一部地域ではこの花から採った蜂蜜がありますが、これはとても香り高くおいしいので是非たくさん流通してほしいものです。
とはいえ、侵入地域では面倒な存在であることに変わりはありません。サトウキビ畑の強害雑草として除草されたり、純群落を作ることから在来草本植物との競合が懸念されています。
有効活用は少数派ですが、武蔵野免疫研究所を中心とする企業グループ「むさしのイミュニティーグループ」が温暖な沖縄県宮古島で清浄栽培し、宮古ビデンス・ピローサ(タチアワユキセンダングサの学名)と呼んで健康茶や健康食品、化粧品などの主要原料として使い、利用促進の研究をしています。
花の様子
(屋久島町安房2015.10.)
舌状花が多いタイプ。
(屋久島町安房2016.2.)
舌状花が10mm以下で、コシロノセンダングサなど別の種かと疑いたくなるものも。ちなみにこれは、周囲がすべて大きいタチアワユキセンダングサタイプで、この花一つだけがこんな状態でした。草刈りでいじけたタイプでしょうか。花だけ見ると、とても困ります。
(屋久島町小瀬田2017.6.)
葉の様子。対生しています。
(屋久島町安房2015.10.)
種の様子。突き出た2本の棘が動物や衣類に刺さって着き、ほかの場所へ移動して分布を広げていきます。沖縄地方で「サシグサ」と呼ばれる所以です。
(屋久島町小瀬田2015.9.)
屋久島や奄美大島では冬期(12~2月)でも花は咲き続け、通年種子を生産しています。発芽から開花までたった2ヵ月。超スピードです。
(屋久島町小瀬田2015.9.)
それゆえ、路傍から空き地までたくましく増え続けます。
(屋久島町小瀬田2015.9.)
旺盛な繁殖力で純群落を形成し通年でたくさんの花をつけるので、チョウやハチなどの虫たちの大切な吸密植物になっています。オオゴマダラが生息する喜界島でも、たくさんのタチアワユキセンダングサが生育していました。
アゲハチョウ来訪。夏型オスと思われます。
(屋久島町安房2017.7.)
クマバチ来訪。残念ながらオスメス区別がつけられないポジションでした。クマバチはの食性は蜜と花粉両方です。
(屋久島町安房2017.10.)
<特徴>
・ 南北アメリカ原産
・ 一年生~多年生草本
・ 花期は3~11月(南方では1年中)
・ 花は筒状花が黄色、舌状花が白色で大きく長さ10mmを超え、直径3cm程度の花をつける。茎の途中から短い枝を出し、総状に1~5個の花つける。
・ 高さ0.3~1m。
・ 葉は5小葉で構成される複葉で多くは対生するが下部で互生することもある。
・ 果実(痩果)は平たい4稜形で頂部に棘を持つ。
・ 分布は九州南部~沖縄(沖縄諸島,先島諸島),小笠原
・ 日当たりのよい原野、路傍、荒地に生育する。
参考までに、難しいセンダングサ属の分類に関してこちらのHPで詳しく紹介されています。(私の手には負えません…)
「雑草徘徊記」
http://homepage1.canvas.ne.jp/e_kamasai/Zassou/zassou/kiku/sendangusa/sendangusa.html